文芸誌志望の「南吉」くん、少女雑誌の世界に飛び込む ー 大崎 梢「プリティが多すぎる」(文春文庫)

2018年10月27日土曜日

大崎梢

t f B! P L

 性別によって働きたい職場を選別してはいけないが、男性にとって、女子宇中学生を対象としたファッション誌が、男性にとって人気のある職場かどうかは議論のあるところだろう。

本書『大崎 梢「プリティが多すぎる」(文芸文庫)』は、意に反して、そんなローティーン向け月刊誌「ピピン」に配属された、新米男性編集者・新見佳孝(通称・南吉)の成長物語である。


【構成は】


Chapter1 PINK

Chapter2 PRIDE

Chapter3 POLICY

Chapter4 PARTY

Chapter5 PINCH

Chapter6 PRESENT


となっていて、「南吉」が週刊千石からピピモ編集部に異動になってから、ほぼ一年間のお話である。


【注目ポイント】


発端は、文芸誌の編集部を目指していた「南吉」が少女雑誌・ピピンに配属されて、全く職場になじめないところからスタートする。


もともと望んだ異動でもないため、やる気がおきるはずもなく、ピピン編集部の「キャビネットの上のぬいぐるみ、ハンガーに吊るされた服、・・・壁の上の時計は花模様」といったショッキングピンクだらけの職場環境になじめるはずがない。2年ぐらい我慢すれば、他の職場に・・と思う彼が、雑誌編集での様々なトラブル、イベントを通じて、編集者として成長していく姿が、本書の読みどころである。


もっとも、そのトラブルが「南吉」の初企画のコンセプト「サマー・プリンセス」のイメージを、スタイリストとは「ラブリー」と合意し、カメラマンとは「夏の姫」と合意したことによって「撮影現場の大混乱」を招いてスタッフからの信頼を大失墜させたり、雑誌の次代の一押しモデルをミスキャストして、彼女の有力雑誌への専属モデルの途をフイにしてしまったり、と雑誌編集的には、かなり冷や汗のでるものなのだが、懸命にリカバーしようとする主人公に、おもわず、感情移入してしまって、「頑張れ」と声援を贈りたくなるのは、作者の腕の冴えであろうか。


そして、プライベートなことをいうと、娘はいるのだが、「リケジョ」の典型のような娘であったため、本書の「ローティーン向けファッション誌」や「読者モデル」といったものに全く縁がない。ではあるのだが、「ピピモ」と作中では称されている雑誌「ピピン)専属の読者モデルのオーディションで、栃木から出てきた、垢抜けない女の子が写真撮影のシーンで


「ああ、明日美ちゃんね。いるのよ、あのタイプ。カメラに慣れるとびっくりするほど見栄えがよくなるの。そしてスイッチが切り替わるように、ふだんと写真では別人になったりね」


と大変身をとげたり、トップモデルの「キヨラ」という女の子が今まで順風満帆でスターダムにのし上がったのではなく、他の雑誌のトップモデルの選考から外れてのリベンジであったエピソードとか、およそ「ピピン」の読者であったとは思えない、人気小説家の「水科木乃」の


「頭の中で私はいろんな女の子になりました。細かいところまで読み込んで、モデルのひとりひとりをどんな子かと想像して、脳内おままごと状態です。ふだんの自分では着られない服を着て、行けないところに行き、話せないことを話すんです。すごく、楽しかった。」

(略)

「ピピンが私の友達だった」


といった述懐といったところに、こういう少女雑誌の底深さといったものを感じて、「南吉」くんも、こういうところで修行すると、いい編集者に育つんだろうな、と思うのである。


【レビュアーから一言】


といいつつも、筋立てはどちらかというと、ドタバタ7分、シンミリ3分といった調合なので、かなりわはわはいいながら読めるのは間違いない。そして、もう一つの魅力は、登場する「ピピモ」と呼ばれる読者モデルの女の子たちが、もう一所懸命で健気で、なんとも愛らしいのであります。

ドラマもよいが、ぜひ原書も読んでくださいな。


このブログを検索

ブログ アーカイブ

自己紹介

自分の写真
日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

QooQ