街なかに潜む不思議な味わいの「謎」の短編集。(と思いきや・・) ー 沢村浩輔「夜の床屋」(創元推理文庫)

2019年1月23日水曜日

日本ミステリー

t f B! P L

 「佐倉」という、どことなくシニカルなところのある男性を主人公に語られる、ちょっと浮世離れしたミステリーの数々のである。

舞台となるのは、山中の無人駅近くの理髪店、海霧がよく出る田舎町のアパート、街中の廃工場、海べりの古い別荘、といったところで、「不思議譚」という表現がぴったりくる話が展開されて、なんとも、「怪しげな」気持ちにかられる短編集である。


(と見せかけて、最後の方でとんでもない仕掛けが隠されているので、油断がならないミステリーなので、油断せず最後まで読んだほうがいいですよ)


収録は


「夜の床屋」

「空飛ぶ絨毯」

「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」

「葡萄荘のミラージュ Ⅰ」

「葡萄荘のミラージュ Ⅱ」

「『眠り姫』を売る男」

エピローグ


の六編。


【あらすじと注目ポイント】


第一話の「夜の床屋」は大学生の「佐倉」と「高瀬」というコンビが、山奥の無人駅で出来わした出来事。山道に迷い込んで、ようやく山中の「蓼井駅」という無人駅にようやくたどり着いた二人は、一夜をこの駅で明かすこととするが、廃屋と思っていた理髪店が、夜中になって電気が灯っていることを発見する。不思議に思いながら、そこを訪れた二人は、店主と美人の娘にシャンプーをしてもらうことになるが・・・、という展開の話。


山中の怪異譚と思いきや、思いっきり下世話な犯罪が隠れていました。


第二話の「空飛ぶ絨毯」は、「佐倉」の友人の八木美紀という女性に起きる話。謎の大筋は、彼女が住んでいるアパートの床にしいている絨毯が、彼女が寝ているうちに消えてしまった、という謎。


謎解きと並行して、八木さんの幼い頃の、町に出る海霧にまぎれて街中を冒険し、そこで出会った少年といつか再会するという約束をしたことが語られる。この思い出話の影響が、この話だけでなく、エピローグでも、効いてくるのでご注意を。


第三話の「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」は、同じく「佐倉」青年が、初対面の少年から、彼の友人が出会ったドッペルゲンガーの呪いを解くため、一緒にそのドッペルゲンガー捜しをやってほしいと頼まれ、近くの廃工場で捜索を行う話。


もちろん、ドッペルゲンガーってのは真っ赤なデマカセなんだが、その嘘に隠して、友人の願いをかなえようとする少年たちの行動力は企画力にあふれてますね。


第四話、第五話の「葡萄荘のミラージュ」は、「佐倉」青年の友人の峰原という男性の生家に関する話。彼の家は、旧家なのだが、彼の家は「葡萄荘」という海べりの別荘を所有しているのだが、その別荘は、祖父の遺言によって、ローランド卿というヨーロッパの貴族に譲り渡すこととなっていて、引き渡すまでは、葡萄荘に一切手を加えてはならない、というとことになっている。


そして、この葡萄荘には、財宝が隠されているという伝承があって。この宝を捜しにきていた「峰原」はと突然「ヨーロッパへ行く」という書き置きを遺して姿を消してしまう。宝とは何?さらに峰原失踪の理由は?といったのがこの二話で解くべき謎。


謎解きは、書斎に隠された謎を解いていくといった展開で、ひさびさに古い「探偵もの」の懐かしい味わいでありますね。


第六話の「『眠り姫』を売る男」は、葡萄荘でみつかった財宝「ミラージュ」にまつわり、この別荘を譲る予定であった「ローランド卿」に関する話。


ヨーロッパに行った「峰原」からの依頼で会った海洋学者が提供する「話中話」で、樹脂のようなもので覆われてた「人魚」を探し出して、資産家に売りつけていた美術商におきた不思議譚である。


【レビュアーから一言】


そして「エピローグ」は・・・、ということなのだが、当方からは、この「最終話」のレビューはやめておきましょう。

少々、ネタバレ的にいうと、それまで読んでいた6つの短編が、すべて結びつき、しかも、思っても見ない方向につれていかれてしまいます。


この展開は驚きでありました。降参です。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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