天馬、柚乃、鏡華がそれぞれに大活躍なのであった ー 青崎有吾「風ケ丘五十円玉祭りの謎」(創元推理文庫)

2019年2月22日金曜日

青崎有吾

t f B! P L

 「体育館の殺人」「水族館の殺人」での見事な推理劇と生活ダメ人間ぶりを披瀝した「裏染天馬」と、元気ハツラツの文学少女風スポール少女の「袴田柚乃」が巻き起こす、学園ミステリーの第三弾。


今回の舞台は表題作の「風ケ丘五十円玉祭りの謎」のほかは、天馬や柚乃が通う「神奈川県立風ケ丘高校」か鏡華の通う「緋天学園」のいずれかなので、正真正銘の学園ミステリーである。


さらに、今巻では、天馬の妹で、かなりの美貌で、かなりの性格破綻者の「裏染鏡華」もメインキャストで登場して、さらにはストーリー展開の破天荒さがパワーアップしてしますな。


【収録と注目ポイント】


収録は


「もう一色選べる丼」


「風ケ丘五十円玉祭りの謎」

「針宮理恵子のサードインパクト」

「天使たちの残暑見舞い」

「その花瓶にご注意を」


の五話。


第一話目の「もう一色選べる丼」は、風ケ丘高校の学食が舞台。ここの学食の人気メニューは、すべての丼ものの中から好きな二種類を選び、半分づつ盛ってもらう「二色丼」なのだが、ソースカツと親子の二色丼が、ソースカツの部分がそっくり残されて学食近くの校庭に放置されていた、という、まあどちらかというと他愛もない事件。


この学食ではもともと教室に食器を持ち帰ることを許可していたのですが、最近、食器が返還されない事態が相次いだため、学食のおばちゃんたちが、今後、食器が返却されない事態が生じたら、一切持ち出しを認めない、と言い渡しているという状況です。

このままでは、持ち出しが禁止されて、普段は弁当をもってくる柚乃と、学食で食事をする親友の早苗は一緒に昼ごはんを食べられなくなる。これではいかん、と天馬に犯人をつきとめるよう学食の食券を報酬に依頼するのだった・・・、というもの。


ネタバレ的には、料理好きの彼女に嫌われたくない「男の子」というのがカギなのだが、甘酸っぱい青春の恋愛物語ですな


第二話の「風ケ丘五十円玉祭りの謎」は、風ケ丘高校の最寄り駅・風ケ丘駅近くの「寝入神社」の夏祭りの出来事。この祭に出店している屋台の半数以上で、お釣りは五十円玉で渡してくれる。祭りのスタッフの高校生の男の子が、スリ対策として屋台をまわって協力を要請したとのことだが、祭りの事務局の正式な取り決めでもないようだ。果たして、その理由は・・・というもの。


ネタバレ的には、セコい小銭稼ぎなのだが、捜査の過程で、「水族館の殺人」でチョイ役で登場した「裏染天馬」の妹「裏染鏡華」の可愛さと性格破綻ぶりが徐々に本領を発揮してくるところが別の楽しみでありますかな。


第三話の「針宮理恵子のサードインパクト」は、第一話の「体育館の殺人」で登場した、意外と性格のよい不良の「針宮理恵子」の恋物語。


彼女が付き合い始めた1年生の「早乙女」は、ブラスバンド部に属しているのだが、彼は「王様ゲーム」で負けてパシリに使われることが多く、しかも飲み物を買って帰ると、教室のカギが閉まっていて締め出しをくらってしまうことが多々ある。さては、軟弱な「早乙女」が部活の先輩女子たちに苛められているのか、と疑った「針宮」は昔ながらの不良ぶりを発揮して・・・、という展開。


ネタバレのほうは、ブラスの女の子は真面目ですねー、というオチ。もちろん、意外に「針宮」もカワイイところが見えてホンニャリしてしまいますね。


第四話の「天使たちの残暑見舞い」は、風ケ丘高校に伝わる、女の子二人の消失事件の謎を解くもの。五年ほどに卒業した「宍戸」という先輩が、9月の昼下がりの3時頃、風ケ丘高校の校舎の3階で教室の窓際に、口づけするかのように顔を寄せ合って、互いの背中に手を回して立っている二人の女の子を目撃する。


しかも、二人の様子は、「指先はガラス細工にふれるかの如く」ぴくりぴくりと震えていて、戸の隙間から二人の荒い息遣いが聞こえる、といった艶めかしさで、見てはならないものを見たようで、宍戸くんは、教室の入り口から目を離さないままで、後ずさってしまう。宍戸くんが、しばらくしてから、再び教室に近づき、窓際をみると・・・。誰もいなかった、という謎を解くもの。


この事件の謎をとくために、現場を再現するわけだが、柚乃ちゃんと早苗ちゃんの「百合」っぽいシチュエーションがなんとも蠱惑的であります。


最終話の「その花瓶にご注意を」は、裏染の妹「裏染鏡華」が通う緋天学園が舞台で、彼女と彼女の親友の「仙堂姫毬」という女の子がメインキャスト。


この二人が、学校の廊下で音もなくこなごなに砕けた「花瓶」の謎をとくもの。まあ、そんなに大げさな謎でもないんだけど、トリック的には「ほう」と言わせますね。


で、この二人の容貌というのが、鏡華のほうが「まつ毛の濃い二重まぶたと光を湛える幼気な瞳が、どことなく妖精めいた魅力を醸し出す、油断しているといつまでも見入ってしまいそうな少女」で、姫毬は「地味なストレートヘアに野暮ったい眼鏡、笑っていても怒っていても大差のない無愛想な顔」といったところなのだが、鏡華のほうは兄顔負けの頭脳派であるし、姫毬のほうは刑事をしている父親に教わった護身術で、とても「強い」女の子である。

(父親のほうは「仙堂」という名字から想像がつきますよね)


【レビュアーから一言】


第一巻、第二巻と長編続きであったのだが、今巻は短編仕立てである。そのせいか、各話の色合いがそれぞれに特色があって、裏染ファンも、柚乃ちゃんファンも、鏡華ちゃんフォンもそれぞれに楽しめる短編集に仕上がっている。


長編にちょっと疲れたら、この巻あたりで箸休めしてもよいですね。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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