「文字」に秘められた事件の鍵を探し出せ = 麻見和史「警視庁文書捜査官」(角川文庫)

2020年1月8日水曜日

日本ミステリー

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 ミステリーが面白いかどうかは、探偵役になる人物の専攻とかプロフィールか性格がどれだけ変わっているか、ということと、そのあたりと風貌との落差がどれだけあるか、というのが決め手になることが多いのは「警察小説」でも同じことであろう。


最近の「警察小説」はガチガチの「刑事もの」か、プロファイリングや脳科学を駆使した、「医療+警察もの」といったのが流行であるようなのだが、「過去の捜査文書」にスコープして、事件捜査に「文章心理学」という手法を使う一風変わった仕立てであるとともに、捜査班のチーフとなるのが


その女性はボブにした髪に、緩いウェーブをかけていた。真っ白なシャツと紺のパンツスーツを着ているせいで、清潔感がある。顔立ちが整っているから人目をひく。


ただ、何か読んでいるときの彼女は、かなり駄目な人だった。読むことに夢中になって、周囲への対応がひどくおろそかになるのだ。


といった、30歳を少し出た年齢の女性ということで、申し分のないキャスティングになっている。


【構成と注目ポイント】


構成は


第一章 アルファベット

第二章 地図

第三章 筆記誘導

第四章 ブルーシート


となっていて、まずは、今巻の犯行のキーとなる人物である「掃除屋」が登場する。ここで、殺された男の右手を、彼が犯行現場にあったのこぎりで切断する場面がでてきて、これがかなりの猟奇事件を思わせるのだが、ここは筆者のフェイクなので、早速のネタバレながら注意喚起しておきますね。


捜査のほうは、迷宮入りした殺人事件の時効がなくなったため、古い捜査資料を探って事件解決を目指すところから、捜査一課の他の班から「倉庫番」とからかわれる、「鳴海理沙」ひきいる文書解読班が現場に残された「文字」に隠された情報を「文章心理学」で分析して、古賀警部率いる足で稼ぐ捜査を実践する「捜査一課四係」を尻目に、被害者の住所や、連続殺人の現場を先回りしていく、という設定で、「The 刑事というイメージの古賀といたるところで衝突していく、という展開である。


そして、第一の事件が、喉を切られ腹を刺されて死んだ後に右手を切断されたもの、第二の事件が喉と胸部を刺されて死亡といったかなり陰惨な殺し方で、さらに、それぞれ現場にはトランプほどの大きさのカードに、アルファベットが印刷されたものが残されていて、といった展開で、「猟奇連続殺人」+「暗号解読」といった風情なのだが、真相のほうは「猟奇殺人」とはちょっと違う「誘拐事件」の方向に進んでいくので、筆者の誘いにのらないように注意して推理してみてくださいな。


最後のほうは、文書解読班らしからぬ廃ビル内での「アクション・シーン」もあるので、色とりどりに楽しませてくれる仕上がりになってます。


【レビュアーから一言】


本シリーズの主人公・鳴海理沙が専門とするのは「文章心理学」ということになっているのだが、そうやらこれはまだ発展途上の学問であるらしく、出てくるエピソードは「心理学」系の物が多い。なかでも興味をひいたのは


人に前もってある情報を与えておくと、出された問題への回答が変わります。心理学では「プライミング効果」と呼ばれるものです。これを応用すれば、筆記紗の回答を一定の方向にコントロールできる可能性があるんです。


というもので、ヒントの出し方であとから連想するものを操作できる、というもので、ここらをあまり強調すると、自由な連想なんてものは幻想かもしれない、とがっくりきてしまうので要注意ですね。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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