山本巧次「留萌本線、最後の事件」ーローカル鉄道廃止の陰にかくれた不正を暴け

2020年6月23日火曜日

山本巧次

t f B! P L

 「八丁堀のおゆう」シリーズで、幕末の動乱もまだ遠い文政期の江戸で、現代科学をつかって事件を解決していく、元OLの「関口優佳」こと「おゆう」の活躍を描いている筆者なのですが、かなりの「鉄道オタク」であるらしく、「開化鐵道探偵」をはじめとした鐵道ミステリーも多数あります。


そんな著者が、北海道の廃線間近のローカル線を舞台におくる鉄道ミステリーが本書「留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白」です。


【構成と注目ポイント】


構成は


序章 其の一

   其の二

第一章 発車

第二章 初動

第三章 待機

第四章 演説

第五章 進展

第六章 疑惑

第七章 疾走

第八章 捜索

第九章 追跡

第十章 肉迫

第十一章 終着駅


となっていて、序章のところは留萌本線ではなく「夕張支線」の廃止のセレモニーの場面と、今は廃鉱となってしまった炭鉱町で、そこに住んでいた小学生ぐらいの男の子たちの別れの場面の回想からはじまります。この2つが今回の鉄道ミステリーの謎解きの大事なヒントになるのでご記憶よろしく。

事件のほうは、廃線間近となった留萌本線の留萌行きの下り始発列車でおきます。数カ月後に廃線となづことがほぼ決定した路線なので、乗車しているのは、ほぼ「鉄チャン」という状況なのですが、路線のなかほどの「恵比島」を出発したあたりで「レイル・ジャック」事件がおきます。乗っていた初老の男が、非常ボタンを押して列車を停車させ、持参していた爆薬が詰められているらしい箱で、運転士や乗客を脅して、数名の乗客・乗務員とともに列車内に立てこもります。

レイルジャックの道連れとなったのは、三十過ぎのフリーターの鉄チャンの「浦本」、銀行の元支店長で定年退職した「下山」、二人連れの女性ユーチューバー「芳賀」「多宮」、運転士の「赤崎」の5人。犯人の「山田」となのる男は、列車を近くのトンネルの中に止めて、外部にいるらしい仲間が「身代金」を獲得するまでの間、ここに立てこもるつもりのようです。


そして、道警に山田たち一味から出された要求は、道議会の交通族の議員を交渉の窓口として呼び出すことと、身代金は当初「17億5500万円」といっていたものを1割に値下げして「1億7550万円」、そして「留萌本線の廃線の取り消し」というものです。


この中途半端な「身代金」の意味は何?、そして、交渉窓口として道議会の大物議員が呼び出された理由は?、さらには、留萌本線の廃線取り消しの持つ意味は?、といったのが、今回の謎解きのキモのところですね。


さらに、この犯人の要求を伝える電話が、犯行地の「北海道」ではなく、東京都内のあちこちの公衆電話を使ってかけられ、身代金の振込先が九州の銀行の口座が利用され、さらには、振り込まれた金が中国籍の銀行の香港支店の口座に送金され、といった展開で、警察の捜査のほうもかなり幻惑させられていくことになります。


そして、究極の謎は、犯人の目的です。交渉役として呼び出された道議会議員が関わっていた別の「犯罪」が明らかになっていく過程で、犯人が狙っている本当の動機が明らかになっていくのですが、ココから先の詳細は本書のほうでお読みくださいね。


【レビュアーから一言】


本書でレイルジャックがおきる「恵比島駅」は、1999年のNHKの朝ドラ「すずらん」の舞台となったとこりですし、この留萌本線は、全国で一番短い「本線」として、鉄道ファンには人気は衰えていないようですね。

道路網やバス代替路線によって、ローカル線の廃線が進んでしまっている、当方の住む「西日本地域」に比べて、まだまだ風情のある「ローカル線」が残っているイメージの強い北海道の鉄道路線なのですが、その経営状況の厳しさから余談を許さない路線はたくさんあるようです。

今回の「新型コロナ禍」で大きな影響を受けたのは観光需要に裏打ちされる「人の移動」なのですが、これから、リモートとソーシャルディスタンスの要請が高まっていく一方であろう時代に、ローカル鉄道がどうなっていくのか、心配なところではありますね。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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