警視庁の上層部の新しもの好きと気まぐれから、法医学の新分野として捜査活動の中に組み入れられた昆虫学。その法医を委嘱された、パワフルでKYな女性准教授・赤堀淳子が、死体にわいているウジや現場の臭気をものともせず、被害者や犯行現場に残された「虫の声」を聞き分けて、通常捜査や鑑識活動では見抜けない謎に迫っていく「法医昆虫学捜査官」シリーズの第3弾が本書『川瀬七尾「水底の棘 法医昆虫学捜査官」(講談社文庫)』です。
「水底の棘」の構成と注目ポイント
構成は
第一章 夏からの知らせ
第二章 刺青が招いた男
第三章 シングルマザーの決意表明
第四章 水底の毛虫たち
第五章 O型の幸運
となっていて、今回の事件の遺体の発見者は、なんと今シリーズのメインキャストの昆虫学者・赤堀淳子准教授その人。彼女が、後輩でパシリのように使っている「大吉昆虫コンサルタント」の経営者・辻岡大吉と東京都の荒川の河川敷に発生しているユスリカの調査と駆除を行っている最中にその死体を発見します。
被害者は、上半身裸で河川敷に堆積した砂に半分埋まるような恰好で突っ伏していて、動物やウジに食い荒らされていて、さらにポケットに量販品の軍手とマイナスドライバーを所持した状態で発見されます。
検死の結果は絞殺と推定され、死後、川に捨てられて流されて、荒川の河川敷に漂着したとされるのですが、冬場にしてはウジによって食い荒らされている量が多すぎることに「赤堀」は目を付け、被害者は川の上流から流されてきたのではなくて、海のほうから打ち寄せられてきたのでは、と推理するのですが・・・、といった展開です。
もちろん、この推理にベテランの鑑定医、しかも昆虫学を鑑定にもちこむのに反対な権威ある医師が同意するわけもなく、赤堀の横槍に激しく反発するのですが、赤堀のほうは、医師の助手をしているシングルマザーの女性と接触して、彼女の心を開いて情報を引き出していき・・という展開です。
一方、赤堀のいつもの相棒の岩楯刑事の捜査は、被害者の腕に残されていた、蛍光塗料の混じった「刺青」の線から捜査をすすめるのですが、この捜査は捜査の途中で補導した若い不良女子から誤情報をつかまされて見当違いの方向を調べたり、鑑識のはぐれ捜査官から教えてもらった「伝説の彫り師」に攪乱されたり、とさんざんな目にあいますね。ただまあ、最終的には両方の信頼を得て、本筋のところに行き着くことができたのは幸いですが、真犯人へはたどりつけなかったのが残念なところです。
ここで捜査に勢いをつけたのが、今シリーズのメインキャストの昆虫学者の赤堀です。彼女が店の倒産の危機を救った居酒屋の店主から、船につく貝を子削げ落とすのに、漁師の間では被害者が持っていたようなドライバーが使われることや、被害者の死体に、日本では珍しい「トラフシャコ」の殻や、ウミケムシの繊毛が付着していたことをつきとめます。
そして、「トラフシャコ」」のさらなる情報をもとめて、国産シャコの有名産地でる横浜の「峰漁港」を訪ね、そこで漁業組合の組合長や、漁業実習で漁師見習いをしている青年たちから、被害者の聞き込みを始めるのですが・・・といった展開です。
このあたりから、被害者が「トラフシャコ」や「シャコ」の密漁に絡んでいたらしい情報とかが浮かび上がってきて、ひょっとすると漁協あげての大犯罪か・・とも思ったのですがこれは行き過ぎた推理でありました。
レビュアーの一言ー岩楯刑事、あわや溺死の危機
第1弾では「赤堀」が犯人に襲われて古井戸に転落させられ事故死の危機に見舞われるのですが、今回は、岩楯刑事と鰐川刑事が犯人に海に落とされてあわや水難死か、という危機に陥ります。物語の後半のほうでは、横浜沖の暗い海の中を、漁船の上から必死に彼らを探す昆虫学者の雄姿が見られるのも、今巻の読みどころです。
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