ミステリー作家の仕掛けた監禁殺人から脱出せよ=市川哲也「密室館殺人事件」(創元推理文庫)

2021年11月11日木曜日

市川哲也

t f B! P L

 髪は白に近い金色に染めていて、顔の三分の一はありそうな大きな黒縁眼鏡をかけ、缶バッジのついたピンクのスタジアムジャンパーがトレードマーク。気だるげで、しゃべりはぶっきらぼうな「不思議ちゃん」キャラながら、行く先々で遭遇する事件の解決率は100%というアイドル探偵・蜜柑花子が活躍する「名探偵の証明」シリーズの第2弾が本書『市川哲也「密室館殺人事件」(創元推理文庫)』です。


第1弾で、かつての名探偵・屋敷啓次郎とナンバーワン名探偵をかけて推理勝負とみせかけて、屋敷の復活をサポートした蜜柑花子だったのですが、今回は売れなくなった流行作家が仕掛ける「密室殺人」の謎解きに挑みます。


あらすじと注目ポイント


事件は、昔はベストセラー連発のミステリー作家だった「拝島登美恵」に彼女の指定した街はずれの館、通称「密室館」に「日戸涼」という青年が館の部屋の一室で目を覚ますところからスタートします。取材と称して呼び出された彼は、屋敷の中で意識を失ってそのまま監禁されたわけなのですが、同じようなシチュエーションで呼び出され、監禁された男女が他にもいることがわかります。


拝島が彼らを監禁した目的は、自分の考案した殺人トリックを使って、監禁されている男女を一人づつ殺害していくので、どうやって殺したかを推理してほしい、というもの。トリックを「論理的」に見破って、拝島が正解と認めれば全員が解放する、というのですが、彼女の本当の狙いはここでははっきりしていません。そして、拝島は自分が本気であることを見せるため、車いすに縛り付けた中年女性を釣り上げて絞殺し、本気度を見せつけてきます。


集められたのは


①火事で上半身と喉を焼かれ、それを隠すために袋を被っている「平山光一」

②髪をサイドポニーにしていて、誰にでもタメ口でしゃべる天然系の美少女「祇園寺恋」。

③今はトラック運転手をしているが近く大金が入るので、それでFIREすると言っているタックトップのマッチョ「勝己正」

④屋敷に用意されていた甲冑に身を固め、防御に余念のない中年男「大塚洋二」

⑤眼帯をし、感情を見せない大学生「栖原恭介」

⑥拝島の熱狂的ファンの「絵畑凪」

⑦物語の語り手で、大学生の「日戸涼」


という7人で、彼らが今巻の拝島美登利による殺人トリックのターゲットになります。そして、これに加えてアイドル探偵「蜜柑花子」も呼ばれていて、総勢8人で殺人トリックの謎解きに挑む、という設定です。


少し付け加えておくと、「祇園寺恋」は「日戸涼」の高校時代の後輩だと彼女自ら打ち明けていて、なにかと涼とペアを組んで動こうとしてきますし、日戸涼は、彼の父と霧母、義兄が何かの事件に巻き込まれて死亡しているのですが、その絡みで「蜜柑花子」に対して恨みを抱いているようです。


で、殺人を予告した拝島はその期間を「4日間」と期限をきっていているので監禁された8人は互いに協力しながら防御に努めるのですが、最初に、マッチョの「勝己」が犠牲になります。彼は監禁が始まった夜の午前二時から四時くらいの間に自室で体をメッタ刺しにされて死亡します。勝己は8人の中でも一番警戒をしていて、しかも体格もよく力も強そうな男性なので、老人で細身の「拝島」がどうやって何度も刺すといった殺し方ができたのか、というのが謎解きのキーとなりますね。


ここで印象的なのは、日戸が蜜柑を


  「本当に未然には防げなかったのかよ。守る方法はなかったのか。

  事件を発生させないことはできなかったのか?」


となじるところで、どうやら日戸は、「反・名探偵派」のようですね。


そして第二の事件のターゲットは、甲冑に身を固め、防御力十分の「大塚」です。彼は、ベッドをバリケードにしてドアを塞いだ状態の部屋で、部屋のクローゼットの中で首を吊って死んでいるのが発見されます。


すこしだけネタバレしておくと、第二の事件が起きる前に、涼と恋、蜜柑は、「栖原」から、彼の恋人が自主映画製作中に彼の不注意で転落死したという打ち明け話を聞いていて、蜜柑はそこに恋人がしかけたトリックを見破っているのですが、これが事件の謎をとく鍵となってきます。


いずれの事件も、老人で細身で力の弱い「拝島」には困難なものなのですが、蜜柑は二つの事件が彼女による「殺人」だったのか、ということに疑念をもちはじめ・・といった展開をしていきます。


最終場面では、ミステリー作家が、生涯の最後に、自分の考案した殺人トリックの実演を図ったという拝島が語った動機に隠されていて本当の動機である「作家の性(さが)」を蜜柑花子が解き明かしていきます。


レビュアーの一言


本巻で異彩を放つのは、「〇〇っしょ」「××っすよ」といった独特の喋り方で、誰にでも能天気の接してくる、サイドポニーの天然娘・祇園寺恋です。


彼女は3回も殺人事件に巻き込まれていて、それがきっかけで、犯罪を防止することなく謎解きだけやる「名探偵」に怒りを覚えている、という設定になっていたのですが、最後のところで、これがひっくり返り、彼女自身が、ひょっとすると蜜

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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