異能の民俗学准教授と大学生が怪異の真相を暴くシリーズ開幕=澤村御影「准教授 高槻彰良の推察1ー民俗学かく語りき」(角川文庫)

2022年2月9日水曜日

澤村御影

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 一度見たら全てを記憶する「瞬間記憶」と抜群の観察力、そして子どもの頃に誘拐されたことによるトラウマを抱える、東京都千代田区にある青和大学で民俗学を教える准教授・高槻彰良と、幼い頃の怪奇体験から人の嘘が歪んで聞こえる異能を持ってしまった青和大生・深町尚哉が、民俗学の知識を遣いながら、世の中で不思議現象といわれているものに隠されている「真実」を解き明かしていく民俗学ミステリー「准教授 高槻彰良の推察」シリーズの第1弾が本書『澤村御影「准教授 高槻彰良の推察1ー民俗学かく語りき」(角川文庫)』です。

このシリーズは、2021年8月から、高槻彰良=伊野尾慧、深町尚哉=神宮寺悠太、生方瑠衣子=岡田結衣のキャストで東海テレビ×WOWOWでseason1が放映され、2022年3月からseason2が放映される予定になっています。


あらすじと注目ポイント

構成は

第一章 いないはずの殺人
第二章 針を吐く娘
第三章 神隠しの家

となっていて、まず冒頭では、今シリーズのダブルキャストの一人である青和大生・深町尚哉が、人の嘘が歪んで聞こえる異能を持ってしまった経緯が描かれます。それは彼が子供の頃、山間部にある祖母の家に夏休みで泊りがけで訪れていた時、「死人」たちが集う夏祭りに迷いこんでしまい、あやうく「あの世」へ連れていかれそうになるところを、死んだ祖父に助けられ、その代償として与えられた「異能」です。このおかげで、人がつく嘘が全て見抜けるようになったため、友人からも家族からも疎遠になっています。

そんな彼が、横浜の家を出て、東京の大学(青和大学)に進学して出会ったのが、たまたま受講した「民俗学Ⅱ」を講義する「高槻彰良」という大学教員。高槻は抜群の観察力を持ち、一度見たものは全て覚えてしまうという驚異の記憶力の持ち主なのですが、極度の甘いもの好きと、都市伝説などの怪奇好きという性向の持ち主です。尚哉の「嘘を見抜く」という異能に気付いた彼は、怪奇を調べるフィールドワークの助手として尚哉をバイトで雇い、今まで人と関りを断ってきたきた尚哉も、高槻のふわっとした人柄と、「嘘」をつかないというところに魅かれて一緒の調査活動をしていく、という設定です。

第一章 いないはずの殺人=事故物件の怪異の真相は?

まず一番目の「いないはずの殺人」では、街中で離されている様々な不思議な話や怪奇譚などの都市伝説を収集している「高槻」のもとへ、杉並区に住むOLから、住んでいるアパートの空き室となっている隣の部屋の壁をノックするような音が毎夜聞こえる、というのです。

そのうち、ノックの音は爪で壁をひっかく音に変わり、さらに部屋の中に長い髪の毛が落ちていたり、ベランダ側のガラス戸に外から手形がついていたり、という怪現象がおきます。相談を受けた高槻と尚哉はその女性とともに、この部屋が事故物件ではないかと不動産屋を尋ね、その隣の部屋を調べます。

不動産屋の若い男性担当者は、隣の部屋が、かつて自殺者のでた物件であることを白状するのですが、その話が嘘であることを尚哉が見抜きます。怪現象の本当の原因が実は、相談してきた女性に関連していて・・という展開です。

第二章 針を吐く娘=藁人形の呪いの真相は?

二番目の「針を吐く娘」は尚哉の同級生からの相談です。彼女は、コンサートの帰り道、日比谷公園を通ったときに、公園内の木の一本に胴体部分と頭部分に釘が一本と待ち針が二十本刺さっている「藁人形」が打ち付けられているのを見つけてから、身の回りにやたらと針が落ちているようになったとうったえてきます。

同じときに藁人形をみた親友にはそういう現象はおきていなくて、これは藁人形の写真をスマホに保存していたせいだ、と彼女はいい、そして、その針が落ちているという怪現象は、尚哉たちが大学の同級生が集まった、バーベキュー・イベントの時にみ発生して・・という筋立てです。

第三章 神隠しの家=町のお化け屋敷に隠されていた謎

三番目の「神隠しの家」は調布に住む「水谷はな」という女子高生から、友人の沙雪が神隠しにあったという相談が持ち込まれます。その友達は、夏休みの思い出作りに、近くにある「お化け屋敷」と言われる空き家に肝試しに行こうと誘います。

「はな」に断られた「沙雪」は一人でこの家に入り込むのですが、そこで行方がわからなくなり、翌日、八王子の路上で意識朦朧の状態で発見されます。その空き家を尋ねた「はな」は、空き家の持ち主だと言う男から、「このあたりではよく神隠し」がおきると告げられます。

「はな」の頼みをうけて、その空き家に侵入した高槻と尚哉は、目張りをして真っ暗になっている室内と、そこに青臭い、甘ったるい臭いが漂っているのを発見するのですが・・という展開です。


レビュアーの一言

今巻でとりあげられる怪異現象は「事故物件」「呪いの藁人形」「神隠し」といったところですが、本シリーズの読みどころの一つは、こうした怪異に遭遇した時、高槻がそこの民俗学的なウンチクを披露しながら、あまり神秘的でない「真相」を明らかにするところでしょうか。今回は、第一章の「いないはずの隣人」にでてきた

怪異っていうのは、『現象』と『解釈』の二つによって成り立っているんだよ。・・・怪異を怪異たらしめ、お化けを産み出すのは、大抵は人の心なんだよ。
(中略)
怖いものを怖いままで置いておきたくないから、人はそこに物語を作って与える。解釈をすることで世界を定義し、自分の理解できる範囲に置こうとするんだ。多少非現実的でも、全くわからないよりはましだから。

というフレーズをピックアップしておきましょう。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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