大崎梢のジュブナイルもの二作を紹介ー大崎梢「片耳うさぎ」、「ねずみ石」(光文社)

2016年9月26日月曜日

大崎梢

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 幅広いテーマのミステリを発表している大崎梢さんなのですが、ジュブナイルも良い作品を発表しています。今回は小学生と中学生を主人公にしたジュブナイルを二作品、ご紹介します。


女子小学生”奈都”が旧家の謎を解く -- 大崎 梢「片耳うさぎ」(光文社)

「配達あかずきん」など本屋の成風堂を舞台にした書店ミステリーで人気を博した著者のジュブナイルっぽい作品。とはいっても、つくりはしっかりしているので、そのあたりは大人のミステリーファンもご安心あれ。

発端は、父親の事業がうまくいかなくなって、父親の実家(地元の名家で旧家であるらしい)に居候している、小学生の奈都が、週末までの数日間一人で、その家で暮らさないといけなくなったところから始まる。父親の実家だから、なんてことはないだろっていうのは庶民の浅はかさというもので、なんとも格式高くて過ごしにくいことこの上ない家であるらしい。そこで暗い顔をしていたら、クラスメートの祐太の「ねえちゃん」のさゆりが一緒に泊まってくれることになった、という設定。

その数日間で起こる事件というのは、ジュブナイルっぽい仕立てのせいか、殺人とかいった荒事はない。なのだが、旧家らしく隠し扉や階段の発見や屋根裏の探索から始まり、奈都のおじいさんの手紙やら、屋根裏に出没する謎の人物の出現やおばさんの出生の秘密や、この家の数代前に起こった毒殺事件の真相とかが絡み合うのと、奈都がこの家の人々に馴染んでいないせいか、誰が味方やら誰が何を企むつもりなのか、先が見えない状況を作り出しているのがこのミステリーの妙で、凄惨な事件はない割に不気味さを醸し出している。

でまあ、奈都とさゆりが共に過ごすのも4日間という短い期間の間に、旧家を揺るがした謎が解かれ、屋根裏の不審人物も、おばさんの秘密も明らかになるので、お手軽と言えばお手軽ではあるのだが、とてもリズミよく読ませるので、そのあたりは了としておこう。

ついでに最後の「エピローグ」のところで、さゆりの正体も明らかになるのだが、少々出来過ぎ感があるよな、と少しばかり腐しておく。なにはともあれ、大団円が用意されている、安心して読めるミステリーであります。


中学生二人、村祭りで迷宮入り事件を解決 ー 大崎梢「ねずみ石」(光文社)

「片耳うさぎ」と同じく、数は少ないと思われる、大崎 梢のジュブナイル。

彼女のジュブナイルの良さは、少年少女向けとは銘打っているから、主人公や協力者などは中学生ないしは小学生の少年・少女であるところは押さえておいて、筋立てや謎解きはしっかりと造りこんであるところと、陰惨な事件がでてこないこと。

この「ねずみ石」も謎を解く事件は、四年前におきた母娘殺人事件で、事件の描写自体をみるとかなり猟期的な感じがするのだが、どことなく遠い過去の風合いを出した表現が多く、陰惨さは薄い。

ホームズないしワトソン役は、田舎の中学校に通う「サト」こと土井諭大という少年と「セイ」というクラスメイト。

物語は、二人が村の神社である「神支神社」の祭りに参加する数日間を舞台に展開する。

先輩の「シュウ」が巫女舞の舞い手になったり、小学生までが対象の御神体の大石にあやかった「ねずみ石」を村の大人たちが隠し、子どもたちがそれを捜す祭りの行事とか、片田舎の村の鎮守らしからぬ由緒ありげな祭りのようで、そのエピソードをたどるだけでも面白いのだが、母娘殺人の重要なキーワードが隠れているので、そこは注意して読んでおこう。

そして、四年前の事件の真犯人を捜すため、当時捜査に当っていた刑事が再び聞き込みを始めたり、「シュウ」の兄で、殺された娘と同級生で交際相手であった「繁樹」の逃走と、その友人の「タマ」が殺されるなど、突然、事件に関連する物事が動き始めるところはちょっと設えすぎの感はあるが、まあ、ミステリの常道と許しておこう。




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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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