学校図書室という閉鎖空間での”ほのぼの”する謎解き人情話 -- 竹内 真「図書室のキリギリス」(双葉文庫)

2017年1月2日月曜日

日本ミステリー

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 学校の図書室っていうのは町の図書館と違って、その学校の教職員、生徒の利用がほとんどということで、ミステリーの舞台としては学園モノが中心となる。


この「図書館とキリギリス」もそういう側面をもってはいるのだが、主人公の「高良詩織」の前任者であるとか、前の夫であるとか学校以外の役者を持ち出しているせいか、学園モノ特有の閉鎖的なイメージは薄い。


第一話で、主人公が物に残された残留思念が読み取れる特異な才能を持つと出てくるので、こいつは八雲ばりの心霊探偵ものか、と疑ったのだが、謎解きのアクセント程度の味付けであったので安堵した次第。


収録は


図書室のキリギリス

本の町のティンカー・ベル

小さな本のリタ・ヘイワース

読書会のブックマーカー

図書室のバトンリレー


の6編。


ざっくりとレビューすると


「図書室のキリギリス」は、主人公「高良詩織」が音楽教師をしている親友”井本つぐみ”の紹介で直原高校の学校司書に就職する物語の発端のお話。校長先生が出す「マルハナバチ」の名前の謎とこれからの登場人物レビューといったところで、図書館担当の若森教諭や最初のうちのストーリーメーカーの”茅島 楓”ちゃんの登場。


「本の町のティンカー・ベル」は、詩織の前任者の”永田千鶴”さんが学校を急に辞めた理由を探して、彼女が現在住んでいる地方へたどり着く話。永田さんの住む町の記述が多くて謎といえば彼女が辞めた理由がお決まりの色恋沙汰っぽいのはどうかなあ。


「小さな本のティンカー・べル」は、新学期を迎えて新しい登場人物、”大隈広里”と”小枝歩乃佳”登場。大隈くんは本嫌いの元野球少年で端役かなって思っていたらこの後の話で意外に大化けする。話の本筋は、2つの高校の蔵書印の入った本の秘密とそれを頻繁に借りていた女生徒の謎


「読書会のブックマーカー」は演劇部の三年生の「瀬井 初」くん登場。楓ちゃんが受験のために英文訳の練習をするためのネタ本さがしがメイン。


途中、詩織の前夫に失踪の秘密につながっていきそうな謎の「羽根」が登場。大隈くんが夏休みに一人旅を敢行するんだってな話が妙に中心にでてくると思ったら次の話の伏線になっているわけだ。


「図書室のバトンリレー」はこの本の最終話。文化祭・読書週間でブックマークコンテストが企画されることに。さらにそこで、読書会でもある「ブックテーブル」も併催することになり、そこで本作の登場人物達が、自分の選んだ本のことついての熱い語りが展開されるとともに、詩織の前夫でカメラマンの未知彦が突然の登場、しかもノンフィクション作家として・・、といったのが筋立て。二人の行く末は、まあどうなるかはわからんが、詩織さんはこれからも学校司書を続けるようだから、ひょっとすると続編もあるかな、といったところである。


巻末に作者による、この本に登場する本達のレビューもあるので、本好きは二度楽しめるといったところであろうか。

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日本の人口最少県の住人。なりわいは行政書士。読書好き、ガジェット好きの昭和人です。

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