都心の駅ビルの6Fにある中規模書店で働くしっかり者の姉さん肌の「杏子」さんと「理知的」で分析と推理力抜群ながらとんでもなく不器用なアルバイト「多絵」ちゃんが活躍する「成風堂」シリーズの第3弾と第4弾 が「サイン会はいかが?」と「ようこそ授賞式の夕べに」
多絵ちゃんの推理が人気作家を救う ー 大崎梢「サイン会はいかが?」
前作までではアルバイトをはじめてまだ3ヶ月めで、書店内で起こる事件の謎解きも遠慮しがちの雰囲気があった「多絵」ちゃんが、堂々とした「探偵ぶり」を発揮しているのが本巻。
【収録と注目ポイント】
収録は
「取り寄せトラップ」
「君と語る永遠」
「バイト金森くんの告白」
「サイン会はいかが?」
「ヤギさんの忘れもの」
となっていて、まず第一話の「取り寄せトラップ」は、成風堂に4人の男性から本の取り寄せの注文が入るのだが、確認するとその誰もが覚えがないという、といった滑り出し。新手のいやがらせかと思っていたら、それに関係しているのでは、杏子とそんなに年齢の変わらない「岡本詩織」と名乗る若い女性が来店してくる。
彼女の祖父は一年前に渓流釣りに4人の仲間といった際に転落死してしまったのだが、亡くなった後に発見された、手帖に、この4人の仲間のうちの一人に年代物らしい「掛け軸」を預けて鑑定を依頼したということが記してある。祖父の死後、その掛け軸の行方がわからなくなっているのだが、この掛軸の行方は、そして、成風堂の本の誤注文の男性は、彼女の祖父が亡くなった時に同行していた釣仲間の4人だとわかって・・・、という展開。
掛け軸を表に出しておいて、べろんと違う犯行がでてくるのでご注意のほどを。
第二話の「君と語る永遠」は、小学校の生徒の「成風堂」の見学から始まるお話。職業の実体験を見たり、経験するといった感じでやっている社会見学の授業なのだが、その中の一人に、単独行動をとる「書店嫌い」の男の子が含まれている。
彼は、「書店嫌い」と言いながら、書店内を一人で歩き回り、広辞苑を棚から引っ張り出そうとして、それを杏子にぶつけて彼女に脳震盪を起こさせたりといった問題行動を起こすのだが、その理由は、といった筋立て。
そして、その社会科見学の後、彼は度々、成風堂を訪れて杏子と話をするようになる。そうこうするうち、近くで起きる幼稚園児連れ去り事件の犯人に、彼が疑われることになり・・という展開。
彼が疑われたことで家出することで、「書店嫌い」に隠された「父親と息子」の泣かせる話が浮かび上がってきます。
第三話の「バイト金森くんの告白」は、成風堂にほんの一月前にアルバイトで勤め始めた、よく言えば「几帳面」、悪く言えば「融通の効かない」高校生の男の子の淡い恋物語。
彼は成風堂で出会った、お嬢様学校に通う女子高生を好きになって、彼女と会ったときには会話を交わせるぐらい親しい仲になることができたのだが、彼女には「レオ先輩」という憧れの存在がいると知ったり、彼女に本のアドバイスをしたお礼として「雑誌の付録」をプレゼントされて落ち込んだり、といった状況下にある。さて、彼の恋の行方は・・・、といった展開です雑誌の豪華付録をネタにつかったトリックが興味深いのだが、サクッと真相を推理する多絵ちゃんの姿が、なんとも「見事」であります。
第四話の「サイン会はいかが?」は成風堂が初めて開催する人気ミステリー作家のサイン会のお話。人気作家のサイン会なんて成風堂始まって以来、と喜ぶのも束の間。この人気作家、「レッドリーフ」となのる人物から長い間、悪質ないやがらせやプライバシーの暴露にあっていて、そのいやがらせ犯を探し出すのが条件というわけ。
そしてその相手というのは、必ずサイン会に現れて、他のファンに紛れているので、正体ををつきとめ、サイン帳に「レッドリーフ」と書けば、これから先、いやがらせを止めるというのだが・・・ということで、多絵ちゃんが解決に乗り出します。
少し、ネタバレすると、この人気作家のデビュー作のモチーフとなった、学校時代の思い出話が、犯人を探り出すカギとなっています。
最終話の「ヤギさんの忘れもの」は、成風堂のおなじみのご老人が書店内で写真を入れた封筒を紛失して右往左往する話。この老人が、夫の転勤で成風堂をやめて青森に引っ越した店員さんを慕って寂しがる話が謎解きのヒントになっていますね。謎解きの方は、「木の葉」は「森」に隠せ、とうところは古典的なものですが、ちっちゃな子供の仕業であるところが可愛らしいです。
【レビュアーから一言】
このシリーズの面白さはの一つに、本屋業界の裏話的なところがぽろぽろとでてくるところで、今巻の書かれた当時が「雑誌の付録」が豪華になり始めたあたりなのか、そのあたりの苦労話がでてきているのだが、少し紹介すると
分別が進み、売り場のゴミも細かくワケなければ、突っぱねられてしまう。通常のゴミならば、梱包用のビニールやいらなくなったちらし類で問題はないのだが、やっかいなのは販促用のパネルや売れ残った本についていた付録。本は返してしまうが付録はこちらで処分しなくてはならない。
素材が紙製、布製、ビニール製ならば、燃えるゴミとしてまとめて放りこめるが、中に金属製がまぎれているとNG。缶のペンケースや、ペンダントなどのアクセサリーはもとより、ファスナーやクリップといった細かいものまで、必ずよけなくてはならない。ただでさえ朝の忙しいときに恐ろしい手間だ。
ということであるらしく、読者の立場だけすると豪華さに喜んでいるだけでよいのだが、裏では意外な苦労もあることに気付かされたのでありました。
本屋のホームズとワトソン、書店営業と出会う -- 大崎 梢「ようこそ授賞式の夕べに」(東京創元社)
成風堂書店シリーズの第4弾。今回は、書店大賞(本屋大賞のもじり、だよね)の受賞をめぐり、怪文書が届き、それをマスコミが嗅ぎつけ、本屋大賞の実施が というストーリー立て。
本屋大賞当日の7時40分に始まり、20時30分に事件の解決をみる、という実質 13時間ぐらいの話であるので慌ただしいこと極まりないが、テンポよく進行するのと、「邂逅編」とあるように成風堂の杏子、多絵と書店営業のひつじくんたちが事件の解決に向かって、半ば共同作業をするという新味があって、最後までぐいぐいと読ませる。
話の大筋は、書店大賞の実行委員に、今の書店大賞は創設時の趣旨を損なっているといった趣旨のファックスが届くあたりから開始する。
ところが、その差し出しの「飛梅書店」は数年前に店主が急死して店をたたんだ書店で今はない。さて、誰がどんな目的で・・・といったところで、成風堂のメンバーと書店営業のメンバーがそれぞれに捜査を開始し、やがて真実に向かって大集合する、といったところ。
主筋は、誰が何の目的で本屋大賞の妨害をするのか、といったことなのだが、それとは別に、昨今の出版業界の様子であるとか、書店の経営の厳しさなどなど、「本」の業界の裏話的なことが随所にでてくるのが興味深い。
ちょっと楽屋落ちっぽいところがないではないのだが、成風堂シリーズ、書店営業マンシリーズどちらの読者にもおすすめでありますな。
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